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TW2 Silver Rain 月代・泰葉(b72003)のblog。
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※非公式SS風です。苦手な方はご注意下さい。

救護所の片づけを終えて、私は久しぶりにノートパソコンを手に取った。
音も無く開き、いつもの様に起動――わずか半日ぶりだというのに、酷く懐かしく思えた。
この休憩時間が終われば、またもう少し後片付けをして、それから帰途に着く。いつもの日常に帰る為に……。

(……でも、もういつもの日常じゃない。)

不意に、ブログを書く手が止まる。
そう、もう此処に来る前の日常には戻れない。仇敵を逃して泣いていた人もいる。身体は無事でも内心に負った傷が癒えない人もいる。そしてもう二度と、帰らない人もいる……。
待っているのは、少なからず昨日までとは違う日常だということに気づいて、急に恐ろしくなった。


――友達は、義兄は、どうなってしまうのだろう……?


思考の淵に沈んで目を閉ざせば、いくつもの映像が流れる。放課後の談笑、手紙を書く時間、穏やかな友人の声、温かな義兄の微笑。

「お兄ちゃん……救護所、来なかったな。」

ぽつりと、呟きがもれる。 
救護所に搬送されてこないということは、重傷を負っていないはずで、本来なら喜ばしいことのはずで。
それでも、いくら理詰めで考えようにも、募った不安は勢力を落とすことなくまだ膨れ上がってくる。

「ねぇ、お兄ちゃん……今何処にいるの? 本当に元気、ね……?」

ふと頬を何かが伝う感触。
その感覚で我に返り手をやって、初めて気がついた――泣いていることに。
声に出したことで、それまでいろいろなものを塞き止めていたものが壊れたのか。伝う雫はあとからあとから絶え間なく流れてくる。

(………淋しい、よ……。)

暫くの間、タオルで顔を隠してじっとしていることにした。こんな表情を他人に、少なくとも義兄にだけは、見られたくなかった。彼の前ではいつも笑って明るくいたかった。

「泰葉さーん!ごめーん、ちょっといいー!?」
「……あ、は、はいーっ!!いまいきまーす!」

救護所から呼び声がかかって、反射的に顔を上げた。この時間なら、新たな重傷者の搬入はないはず。それでも、一瞬どきりと鼓動が跳ねた。

(……大丈夫、落ち着こう。うん、大丈夫だから……。)

タオルでばしばしと涙を拭って、数度深呼吸をした。なんとか泣き止むことに成功。それからノートパソコンの電源を落としながら、両手で頬を叩く。
穏やかで、温かくて、頼りがいのある義兄の前では、いつも笑顔でいたいと思う。そうしていれば、一緒に笑っていてくれるから。
そうしていなければ……大好きな義兄が、ふとした拍子に、その背後にある大きな闇に飲まれてしまうのではないかと、怖かったから。だから笑っていたい、ずっとそう思っていた。

(でも、違う。それだけじゃないんだよ。)

決戦を終えて、耐え難い不安と寂寥感に苛まれた今なら判る。
私は、ただ義兄の朗らかな笑みと声が好きなのだ。だからいつも笑っていて欲しいから、私も笑うのだ。

「泰葉さーん!」
「うえっ!?ははは、はいっ!今行きますっ!!」

再度名前を呼ばれて、私は慌しくノートパソコンをしまうとその声のほうへ駆け出した。いつの間にか、また私は笑えていた。
そして駆けつけた先で手渡された一通の手紙、その差出人は――。

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プロフィール
HN:
月代・泰葉(b72003)
年齢:
32
性別:
女性
誕生日:
1992/06/02
職業:
銀誓館学園高校生
趣味:
たくさん♪
自己紹介:
今度から新しく銀誓館学園に通うことになりました。よろしくお願いします!
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