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※今回もSS調です。苦手な方はご注意下さい。
2009年12月24日。銀誓館学園のクリスマスは一日早く始まる。
「おっはよーっ!泰花!!」
「はい、おはようございます。泰葉さん。」
勢い良く桜咲荘202号室に入った私を出迎えてくれたのは、紫の水干姿の泰花。いつもの様にのんびりと温かな笑顔を見せてくれた。
時間は朝8時。学園のクリスマスパーティーまで、まだあと1時間。
「さてさて、泰花。あのね。」
「……はい?」
「はい、これっ!!」
泰花が首を傾げるかどうかというタイミングで、私は抱えていたトートバッグから小さな包みを差し出した。吃驚しながらも、泰花がしずしずとそれを受け取って、私に促されるままに開封する。
「あら、まぁっ……!?」
「んふふ、メリークリスマス、なのだ♪手作り香り袋だよ~。」
「まぁまぁっ!ありがとうございます……素敵な香り。『黒方』ですね。」
「Σわぉ、聞く前に当てられた!……って、そっか。泰花じゃお香は慣れ親しんでるよね。」
実家が古くから陰陽道を受け継ぐ一族の本家だって言うんだから、この程度は教養なのかもしれないってことに、私は全然思い至らなかった。なんか、ちょっと残念。
泰花はありがとうございます、と優雅に微笑むと、早速懐に忍ばせてくれた。
「さて、それでは早速香月さんと理人さんをお迎えに参りましょう。」
「うんっ!行こう行こう!!れっつごーっ★」
桜咲荘から学園の男子寮――といっても、いくつもあるうちの一つだが――はちょっとだけ遠い。今から歩いて迎えにいけば、丁度学園のパーティーが始まる頃に会場に着くはずだ。
道中、並んで歩きながら泰花が問う。
「もしや……香月さんや理人さんにも香り袋を手作りされたのですか?」
「うんっ。サプライズプレゼントなのっ♪」
「まぁまぁ……!素敵ですね。」
「んふふふ、まだふたりには秘密だからね?」
「あらあら、ふふ♪承知致しました。」
ふんわりとした微笑みにつられて、話が弾む。香月さんには『侍従』、理人さんには『菊花』、そして自分には『荷葉』の香りだと話せば、風情のある贈り物だと褒められて何だか照れくさくなった。
* *
学園に着くと、既に辺りは結構な賑わいぶりだった。メイン会場には大きな袋を担いだサンタの姿もある。
「あら……あれは……!」
泰花がその正体に気づいて、笑顔で呼びかけて手を振る。ふむふむ、知り合いなのね。
そんなことを思っているうちに会場の一角で追いかけっこが始まり、ノリで「サンタさん捕獲大作戦」とでもいうような鬼ごっこが始まった。
Σおぉっ!サンタさんを捕まえたら願い事を叶えてもらえるのねっ!?頑張る、超頑張る。隣で香月さんが溜息ついてるけどこの際気にしないっ!ごめんね香月さん。
「よーし、捕まえるぞーっ!!」
――どった~ん★
駆け出していきなり。
派手に転びました。
うぅ……自分の運動音痴がこれほど恨めしいとは。
泰花なんて鍛えているだけあって、あっという間にサンタさんに迫ってます。あの子、もうちょっとで捕まえちゃうんじゃなかろうか!?
みんなが振り向いて心配してくれる中、慌てて体制を整えて再び走り出すも……やっぱり何も無いところで転ぶ。
……どうしよう、私。これ、《能力者》以前に学生として致命的かもしれない。
そんなことを考えていると、傍で藍色の狩衣が動いた。理人さんだ。
「……さんたを捕獲すればよいのだな?よし、協力しよう……挟撃する。」
言うや否や俊敏に駆け出す彼。どうやら結社の人に力を貸した様子。挟撃して捕まえようとか、やっぱり慣れてる人ってすぐそういうの思いつくのね、なんて感心し――はたと我に返る。
「わ、私だってー!」
「――追いつきました!えいっ!」
気合一閃、頑張って追いすがりますともっ★
……Σっていってる間に泰花が追いついてるし!?飛びついてるし!?
「まだまだぁっ!!」
Σおぉ!しかしサンタさんも粘り強い!泰花が掴んだのは帽子だけという。なんという。
でもその隙を突いてか、他に追いかけていた人達にすっかり囲まれちゃってるサンタさん。そこへ――
「えーいっ!」
「――隙あり。」
「Σうおっ!?」
理人さん達の見事な連携による挟撃作戦、サンタさんはどうやら逃げ切れなかった様子。
背後にまわった理人さんが腕を掴んだところに、もうひとり女の子がサンタさんに抱きついて、チェックメイト★
うわーっ!すごいや!!
「お疲れ様でした、おめでと~♪」
みんな、ぱちぱちと拍手喝采しながら口々に労いあって。わたしもそれに混ざってサンタさんにもみんなにもお礼をいいました。
こけてばっかりだったけど、いーっぱい楽しませてくれましたもん♪
サンタさん曰く「サンタっていうのはみんなに夢とロマンを届ける存在」だって。今年もばっちり、夢とロマンを頂きましたっ。
ちなみに、見事サンタさんを捕獲した女の子は、プレゼントに手乗りモラぐるみを貰ってました。かっわいい~♪
* *
そして翌日。
前々から理人さんに「クリスマス」についていろいろと説明をしたりあちこち一緒に巡ったりしていた私は、初めての感想を聞いてみたくて早速お部屋にお邪魔しました。
「……で、どうでした??どうでした??」
「ふむ……想像していた以上に楽しませて貰った。ただ、そなたの説明では華やかで静かな宴だと思っていたが……。」
「……『が』?」
うぐっ……やな予感。
「さんたを捕獲して願いを叶えてもらう行事だとは、思いの外活動的だな。良い汗をかいた……。」
「Σいやいやいや!?それちょっと誤解ですからっ!?」
「……違うのか?」
……やな予感、的中。
その後の香月さんとふたりでしたお話で、果たして誤解を解いてもらえたのかどうか。
理人さんって、意外なところで意外なんだから、もう。
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